溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
──と。
「……屋上?」
ふと思った俺は、職員室から鍵を借りて一目散に階段を駆け上がる。
いつか、小春から忘れた弁当を受け取ったその先は、屋上への入り口だ。
──ガンッ。
足が何かを蹴り、鉄の扉に当たった。
「なんだ?」
それは小春のカバンだった。
猫のマスコットがついているからすぐにわかった。
「クソッ!」
鍵穴に鍵を突っ込む時間ももどかしい。
ようやくドアが開くと、雨風がぶわっと俺を濡らした。
「小春――――!!!」
灯りもない真っ暗な屋上。
寒くて、冷たくて、暗くて。
強がってるくせに、怖がりな小春。
絶対に泣いてるはずだ──
「……っ!」
屋上の隅で、小さく体を丸める姿が目に飛び込んだ。
「小春っ……!」
駆けよって、抱きしめた。