溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
幸い、小春は一緒に住んでいながら俺の気持ちには全く気付いてないだろう。
鈍いしな。
毎日ひとつ屋根の下で、この気持ちを必死に抑えてる俺は、すげえ頑張ってると思う。
『行かないで』
昨日、弱々しくそう言った小春がすごく愛おしかった。
力いっぱい、抱きしめてやりたかった。
自分からあんなことを言うなんて、よっぽど怖い思いをしてたんだよな。
そう思えば思うほど、小春をあんな目に遭わせた奴らが憎くて仕方ない。
「ここだな」
金子から寺田のクラスは聞いていた。
3年のフロアに来るのは初めてだが、先輩も後輩も関係ない。
我が物顔で歩いて行く。
「えっ!? もしかして永瀬くんじゃない?」
「なんでなんでっ!?」
俺がこんなとこに来たのが珍しいのか、女子はどいつもこいつも目を輝かせ始めた。頬を染めてる奴もいる。