溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
……こういうのが、ほんとムカつくんだよな。
俺のなにを知ってるっつうんだよ。
「あのっ……」
誰もが遠巻きに俺を見ていくなか、頬を紅潮させながら声を掛けてきたのはひとりの女。
そいつのネームプレートには、寺田という名前が刻まれていた。
……こいつか。
自分から来てくれるなんて、探す手間が省けた。
小春とは似ても似つかないくらいケバくて図々しそうな女は、目をキラキラさせながら、頬を染めている。
「誰かに用事? 良かったら呼んでこようか?」
毒づいた一面があるとは、この顔からは想像も出来ない。
でも、小春を苦しめた張本人はコイツにまちがいない。
……だから、女ってのは嫌なんだ。
ニコリと笑顔の一つでも見せてやろうかと思ったが、コイツにそんなサービスをする気も失せた。
「アンタに用があって」