溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
「もしかして、メシ待っててくれた?」
「……」
「どうした……?」
「あっ、えっと……食欲なくて……」
ほんとは待ってたんだけど、一気に食欲なんてなくなってしまった。
それに……朔くんは食べてきちゃったんだもんね……彼女さんと。
「大丈夫か?」
「……うん。冷蔵庫にサラダうどんが入ってるから、もしお腹すいたら食べて」
これ以上一緒にいたら、朔くんの前で泣いちゃいそうで。
私は部屋に駆け込んだ。
ベッドに飛び込んで、顔をうずめる。
分かってたよ。朔くんがくれる優しさは、家族に向けるものと同じだって。
一緒に住んでたら、情だって移るもんね。
そこに恋愛感情なんてないことくらいわかってた。
朔くんの特別になんてなれないことくらい、わかっていたのに……。
私に対して普通に接してくれてるだけで贅沢なのに、それ以上を望んだらバチが当たるよね。
でも、やっぱり苦しいよ……。
その夜は、ベッドの中で声を押し殺してひたすら泣いた。