溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。

さて、と。


俺も準備するか。


小春から遅れること30分、俺も家を出た。


祭り会場は、多くの人ですでに大盛況だった。


ここに来たのは中学2年生のとき以来だ。


クラスの仲間と祭りを回ったけど、数メートル歩くごとに女に声を掛けられて、それに懲りてそれから行かなくなったんだ。


「あのっ、ひとりですか?」


浴衣姿でヨーヨーを手にした女が近寄ってきた。


「……っ」


……なんだよ、話しかけて来るなよ。


と、思わず顔に出そうになったのグッとこらえて言った。


「彼女と待ち合わせなんで」


俺も、少し心を改めようと思った。


小春の彼氏として。


小春にだけ優しくて、他の女を無下にするのは違うって気づいたんだ。


いい顔をするのと、優しくするのは全く別だと思ったから。


そのことで、小春に火の粉が飛ばないようにってのももちろんある。


あの副会長のせいで学校中に知れ渡って、それはそれでよかったのかもしれない。
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