溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
「……」


思わず、手と口が止まってしまった。


家で食べるカレーの味なんてどれも同じだと思っていたが。


俺が16年間食べてきたカレーの味とは全く違った。


「あのっ……」


動きを止めた俺に、不安げに声をかけてくる相沢。


うまい。めちゃくちゃうますぎるだろ、これ。


店で出しても金取れるレベルだと思う。


だけど、そんなこと口が裂けてもいえない。


「……べつに」


なんて興味のない口ぶりで答えたが、サラダもスープもすごくおいしかった。


「ごちそうさまー。とーっても美味しかったわ。ねえ、朔?」


母親に振られたが、俺はそっけなく答える。


「べつに、ふつー」


うまかった、なんて恥ずかしくて言えるか。


学校でのキャラのせいもあり、そう言うしかない。
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