溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
「でも、そんな約束覚えてるかしらね?」


蘭子ちゃんが自慢の黒髪をさらりと払いながらそう零せば、私の胸も不安に揺れる。


ううっ。


それが一番心配なんだよね。


「覚えてるって! だって、私が覚えてるんだから!」


勢いよく言えば、ふたりは私をしばらく無言で眺めて。


「そうねえ」


と、ハモッった。






キーンコーン……。


お弁当を渡せないまま、ついに4時間目が終わってしまった。


女子とは違って机をくっつけることはないけど、永瀬くんの周りにも、数人の男のたちが集まる。


永瀬くんの一連の動きを目で追っていると、カバンの中を覗き込んで、「あっ」って顔をした。


やっと、お弁当を忘れたことに気づいたみたい。
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