三月には髪を切る〜この恋は叶いますか?〜
通りを歩いていると、女性たちがヒソヒソ話している声が未来の耳に入り込んできた。女性たちが見つめる視線の先を辿っていくと、未来の胸も高鳴っていく。

「花巻さん!」

そこには、ベンチに座って予定表を見ている清高の姿があった。ただ予定表を見ているだけでも絵になる。

清高は未来の声に顔を上げる。目があった刹那、未来の頰は赤く染まった。お店以外で会うのは初めてだ。

「堤さん、お久しぶりですね」

「は、はい!偶然ですね……」

Floraではもっとたくさん話せているはずなのだが、なぜか緊張してうまく話せない。未来は伸びてしまった髪にそっと触れた。緊張すると髪を触ってしまうクセがあるのだ。

「そういえば、もうすぐカットしに来てくれるんですよね?」

「はい。この長さとももうしばらくお別れですね……」

未来が髪を触り続けていると、ふわりと清高に髪を触られた。未来は「へっ!?」と大きな声を出してしまう。
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