三月には髪を切る〜この恋は叶いますか?〜
一瞬にして世界は二人の空間になった気がした。ガラガラと未来の足元が崩れていく感覚がする。

「清高〜!!トイレ混んでてさ〜」

「わかったから一旦離れる!」

二人は相変わらずくっついている。未来の体が震えた。

「清高さん、声をかけてすみませんでした」

未来は無理やり笑顔を作り、その場を立ち去る。「堤さん!」と清高が呼び止める声がしたが振り向く余裕などない。逃げるようにその場から離れる。

家の中に入った刹那、未来はその場に崩れ落ちた。涙があふれて止まらない。肩を震わせ、声を上げて泣き続ける。

あの女性は恐らく清高の恋人だろう。当然だ。かっこいい清高に恋人がいない方が不思議だ。美男美女でとてもお似合いで……。未来は泣きながら寝室に走った。

寝室には、メイクや綺麗な服などが置かれている。未来はメイク道具をゴミ箱に捨てた。涙で目の前が滲む中、服に手をかける。

今まで清高に褒めてもらおうと、メイクやおしゃれを頑張ってきた。しかし、それも全て無駄になってしまった。
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