三月には髪を切る〜この恋は叶いますか?〜
「好きって伝えたかった……!!」

未来は清高の笑顔を思い浮かべ、泣き叫んだ。



清高への失恋があってから、未来はあれほど胸を弾ませていたFloraに行くことを憂鬱に感じていた。

今さら別の美容師に変えてもらうわけにはいかない。未来はため息をつきながら支度を始めた。今日がいよいよ髪を切ってもらう日だ。

「髪を切ったらリセットできるのかな」

伸びた髪を見つめ、未来は呟く。この髪にまた清高が触れるのだ。考えるだけで泣き出しそうになる。

Floraは家から三十分の場所にある。そこに向かう足はいつもとは当然違って重いものだった。

失恋は初めての経験ではない。しかし、清高への想いは今までのどの恋よりも燃えていた。どの恋よりも真剣になっていた。

Floraにつき、未来はドアを開ける。美容師数人が「おはようございます」と笑顔で挨拶をしてくれた。いつもなら、「おはようございます!」と未来も返す。しかし、今日は暗い声しか出なかった。
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