三月には髪を切る〜この恋は叶いますか?〜
時々清高が話しかけてきたが、未来はうまく答えることができず、気まずい空気があった。

未来のセミロングにはどんどんはさみが入れられていく。切ってもらう音が心地よく、未来は目を閉じた。

この恋は叶わないと心のどこかでわかっていたはずだった。もう泣いたりするのはやめよう。未来は自分に言い聞かせる。清高の選んだ人は清高に相応しく可愛い人だった。二人は本当にお似合いだ。

数時間後、未来の髪はベリーショートになっていた。ここまで切ったのは初めてだったので照れくさい気持ちになったが、おかげで気持ちに整理がついたような気がする。

「ありがとうございました」

未来は今日初めて清高に笑いかけた。清高は一瞬驚いた顔を見せたが、ニコリと微笑む。

「堤さんは色々な髪型が似合いますね。ベリーショートもよくお似合いです。相変わらず髪質もいいですし、羨ましいです」

「えへへ……」

恋を諦めようと決めたからか、清高とも少し話せた。未来はホッとしながら預かってもらっていた荷物を受け取り、代金を払う。
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