独占欲強めな御曹司に最愛妻として求められています~今夜、次期社長は熱烈求婚を開始する~
おまけ話1 王子様の幸せ前夜
おまけ話 その1
15の「傷跡」の直後のあたりのお話です。
ーーーーーーーーーーーーーー
心地よいぬくもりを感じながら目を覚ました雫は部屋が明るい事に気が付いた。
何となく目の奥が重い。
(…あれ?ここ、どこ?)
自分が見慣れない部屋にいる事に気づく。
不思議に思いながら横を見ると目の前に奏汰のとびきり整った顔がある。
しかも、彼は目を覚ましていて、こちらをじっと見つめているではないか。
驚きで一気に覚醒する。
「おはよう」
「!?…奏汰さん?」
どうやらここは奏汰の寝室のようだ。同居しながら立ち入る事は無かった場所。
整理整頓された部屋は広く、落ち着いた色味のデスク、本棚などの家具、
そして今横たわっている大きなベッドが置いてある。
雫の使っている部屋のベッド同様とても寝心地が良いし、何とも落ち着く香りがする。
おかげで人の部屋だと言うのにしっかり熟睡してしまったらしい。
奏汰は雫に添い寝する形で頬杖をついていて、口元を綻ばせて甘く微笑んでいる。
「あ、あの……何で私?」
「覚えてない?昨日しーちゃんあのまま寝てしまって。ソファーに寝かすのも良くないし、かといって君の部屋に勝手に入るのも悪いかと思って、俺の部屋にお連れしました」
(……あぁ、私、昨日泣き疲れて奏汰さんにひっつきながら寝てしまったんだ)
また奏汰に迷惑をかけてしまったと、雫は自己嫌悪に襲われる。
ベッドにお邪魔してしまい、まさかの添い寝状態。もちろん何かあったわけでは無く
雫の服はボタンひとつ外れていない。
泣きつかれて寝てしまうなんて小さい子供のようじゃないか。
そして、心なしか奏汰の顔が疲れているように見える。
自分が邪魔でゆっくり眠れなかったのではないだろうか。
リビングのソファーは座面が広いし、十分寝心地も良さそうだから転がしてくれて良かったのに。
「ごめんなさい。ベッドを占領してしまって。お邪魔でしたよね。奏汰さん、ちゃんと寝れましたか?」
「うん?一晩中君の可愛い寝顔を見るのに夢中であまり寝れなかったかも」
奏汰は笑みを湛えたまま言う。
「!」
雫は赤くなって両手で顔を覆った。一晩中は冗談だろうが、自分の寝顔見られてたなんて、
恥ずかしい以外の何物でもない。
「うぅ。すみません。あの、あと……昨日はいろいろとありがとうございました。楽しかったし……嬉しかったです」
楽しかったのは一緒に買い物をしたり食事をしたり会話をしたこと。
嬉しかったのは突然の敵意と中傷から守ってくれたこと、まるごと優しく寄り添ってくれたこと。
覆った両手を頬まで下げ、奏汰を見上げながら言う。
綺麗な顔が近すぎて焦って上手に言葉にできないのだが、どうしても感謝を伝えたかった。
「……っ」
虚を突かれたような顔をした奏汰は
「……ねぇ、俺やっぱり試されてる?可愛すぎるんだけど」
と、更に顔を近づけてくる。その鳶色の瞳が熱っぽく見えるのは気のせいだろうか。
(近い!近いですっ、顔が)
「た、試して?なんていません」
横たわったままの雫は距離を取ることが出来ず、何の事がわからないながら必死に否定する。
「そうだよね」
奏汰は気を取り直したように体を起こす。
「さ、俺は起きようかな。残念ながら今日は仕事だから」
と、すっと身を翻して部屋を出て行く。
その後ろ姿が妙に急いでいるように見えたので
やっと体をベッドから起き上がらせた雫は慌てて時計を確認する。
「あれ、まだこんな時間」
会社に行くにしてもまだ起きるには早すぎる時間だった。
――奏汰は後に
『あれほど精神力が必要とされた夜も朝も初めてだった』
と苦笑交じりに語る。
ふたりが想いを通わせる、幸せ前夜の出来事。
15の「傷跡」の直後のあたりのお話です。
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心地よいぬくもりを感じながら目を覚ました雫は部屋が明るい事に気が付いた。
何となく目の奥が重い。
(…あれ?ここ、どこ?)
自分が見慣れない部屋にいる事に気づく。
不思議に思いながら横を見ると目の前に奏汰のとびきり整った顔がある。
しかも、彼は目を覚ましていて、こちらをじっと見つめているではないか。
驚きで一気に覚醒する。
「おはよう」
「!?…奏汰さん?」
どうやらここは奏汰の寝室のようだ。同居しながら立ち入る事は無かった場所。
整理整頓された部屋は広く、落ち着いた色味のデスク、本棚などの家具、
そして今横たわっている大きなベッドが置いてある。
雫の使っている部屋のベッド同様とても寝心地が良いし、何とも落ち着く香りがする。
おかげで人の部屋だと言うのにしっかり熟睡してしまったらしい。
奏汰は雫に添い寝する形で頬杖をついていて、口元を綻ばせて甘く微笑んでいる。
「あ、あの……何で私?」
「覚えてない?昨日しーちゃんあのまま寝てしまって。ソファーに寝かすのも良くないし、かといって君の部屋に勝手に入るのも悪いかと思って、俺の部屋にお連れしました」
(……あぁ、私、昨日泣き疲れて奏汰さんにひっつきながら寝てしまったんだ)
また奏汰に迷惑をかけてしまったと、雫は自己嫌悪に襲われる。
ベッドにお邪魔してしまい、まさかの添い寝状態。もちろん何かあったわけでは無く
雫の服はボタンひとつ外れていない。
泣きつかれて寝てしまうなんて小さい子供のようじゃないか。
そして、心なしか奏汰の顔が疲れているように見える。
自分が邪魔でゆっくり眠れなかったのではないだろうか。
リビングのソファーは座面が広いし、十分寝心地も良さそうだから転がしてくれて良かったのに。
「ごめんなさい。ベッドを占領してしまって。お邪魔でしたよね。奏汰さん、ちゃんと寝れましたか?」
「うん?一晩中君の可愛い寝顔を見るのに夢中であまり寝れなかったかも」
奏汰は笑みを湛えたまま言う。
「!」
雫は赤くなって両手で顔を覆った。一晩中は冗談だろうが、自分の寝顔見られてたなんて、
恥ずかしい以外の何物でもない。
「うぅ。すみません。あの、あと……昨日はいろいろとありがとうございました。楽しかったし……嬉しかったです」
楽しかったのは一緒に買い物をしたり食事をしたり会話をしたこと。
嬉しかったのは突然の敵意と中傷から守ってくれたこと、まるごと優しく寄り添ってくれたこと。
覆った両手を頬まで下げ、奏汰を見上げながら言う。
綺麗な顔が近すぎて焦って上手に言葉にできないのだが、どうしても感謝を伝えたかった。
「……っ」
虚を突かれたような顔をした奏汰は
「……ねぇ、俺やっぱり試されてる?可愛すぎるんだけど」
と、更に顔を近づけてくる。その鳶色の瞳が熱っぽく見えるのは気のせいだろうか。
(近い!近いですっ、顔が)
「た、試して?なんていません」
横たわったままの雫は距離を取ることが出来ず、何の事がわからないながら必死に否定する。
「そうだよね」
奏汰は気を取り直したように体を起こす。
「さ、俺は起きようかな。残念ながら今日は仕事だから」
と、すっと身を翻して部屋を出て行く。
その後ろ姿が妙に急いでいるように見えたので
やっと体をベッドから起き上がらせた雫は慌てて時計を確認する。
「あれ、まだこんな時間」
会社に行くにしてもまだ起きるには早すぎる時間だった。
――奏汰は後に
『あれほど精神力が必要とされた夜も朝も初めてだった』
と苦笑交じりに語る。
ふたりが想いを通わせる、幸せ前夜の出来事。