トッキーチャックGOGO
また別の日。


高校生の少年が、男に絡まれていた。
その横には、男が乗っていた車と自転車が倒れていた。
自転車で車道横を走っていた少年が、進路妨害か何かをしたのだろう。
男が激しく捲し立てる。
言いがかりをつけているようでもある。

そんなものは当の本人達しか知らないことで、どちらが正しいかなんてわからない。
ただ、怯えている少年の胸ぐらを掴んで脅す姿はどう見てもよろしくない。
物の道理に反する行為である。


とすると、ヘッドライトの中にぬっと黒い影が立ち塞がった。全身黒ずくめの巨大な塊だった。
頭から被った布はテカテカして、ラバーのようであった。
どう見てるのか、顔の部分には穴が開いておらず、不気味である。
筋肉の盛り上がりが、そのままラバーの中に綴じ込められたようでごつい。


急に陰になったもので、男が振り向く。
逆光に中に立つ黒い塊に、ギョッとしたものの闖入者の登場に気を悪くしたか、近づいてきた。
瞬間。
少年の前を、くの字になった男がすっ飛んで行った。
黒い影の前蹴りだった。
ずんぐりむっくりで脚も長くないが、威力は強力だった。
車道の脇、四つん這いのまま顔を上げた男の目の前には、靴の裏が待っていた。
追撃の前蹴りだった。
そのまま男は、2回転して止まり動かなくなった。

放心状態の少年が、黒い塊を見ていると、
「I'm TOCKY CHACK」
と言った。

その言葉は、ネイティブばりの発音の英語だった。





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