トッキーチャックGOGO
ヒメは話せば話すほど、不思議な少女だった。18歳。
学校は辞めてしまったらしい。アルバイトで生計を立てている。
運動は苦手で、階段で足わ挫き転げ落ちたらしい。
不思議なのは、度々そういった転倒とかをするのだか、大怪我をした事が無いらしい。それは運なのか、偶然なのか自分でも判断しかねると。
気さくに話すのでもなく、淡々と話すのだが極度のオタク気質らしく、アニメだかゲームの話になったら、目を輝かせて饒舌になった。
その時期、紫とピンクが混じった様な髪色はなんか好きなキャラクターと同じ色だとか、口の回りにあるピアスも好きなアーティストの真似なんだとか、色々話した。
その時別段気にもしていなかったのだが、話している最中に捻挫と打撲の痛みは引いていたらしい。

その後、連絡先を交換し彼女の務める居酒屋へも出向いてみた。
なんとも、威勢がよくて別人かと思ったほどだ。その際訊いてみたのだが、シチュエーションによって制服やメイクを変える。その瞬間にスイッチが入り、別のキャラになったような気がするのだと言う。

個人的にアポを取り、待ち合わせた。
その日には事前に用意していた、彼女の好きなアニメのキャラクターのコスプレ衣装を持って来ていた。
彼女自身コスプレはしないそうだが、ある妄想により可能性を確かめたかったのだ。
予約していたコスプレ専用の写真スタジオへ誘うと、半ば無理矢理コスプレーヤー化させてみた。

化学反応が起きた。

そのキャラクターが宿ったように、目つきが変わり表情も急に大人びた。
長いロングコートの様な衣装だったのだが、立ち振る舞いを見るべく、殺陣のような動きを真似させてみた。
すると、下段から中断の蹴り、脚上がりませんよー、などと言いながら鋭い蹴りが出てきた。
力わ込めて、と要望すると力強く重い蹴りが来た。
そのまま、上段とすっと蹴ってきて何と言ってもそのフォームの美しさが際立った。
多分、アニメの中で動くキャラクターの動きをトレースしてるんだろうけど、それがきっちり出来る才能が素晴らしかった。
上段のまま脚を着地、その脚を軸にして反対の脚で後ろ回し蹴り、最高だった。

それを、20センチはあろうハイヒールを履いたまま行うそのセンスに唸った。


彼女をトッキーチャックにスカウトした。










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