僕だけが独り占めしたい。
もう一年もいっしょにいるのに一度も見たことないのだから彼は本物の無気力で、弄ばれてるみたいで気に食わないときもあるけど、好きだなあって思って、わたしは結局彼を甘やかしている。




容姿だけでもじゅうぶんなのに、彼が恵まれているのは容姿だけじゃない。

運動だって、勉強だっていつも手を抜いているのに、本気でやれば足は速いし、わたしのほうがずっとずっと勉強しているのに、あまり差がつかない。




どこにでもいそうな平凡のわたしと神様に気に入られている彼は、ぜんぜん違うなあ。




「ねぇ、無視しないで?」
「ん?あ、聞いてなかった……ごめんね?」

「もーなんでもない」



わたしはこの子犬のような目にとっても弱くて、そんなふうに見つめないで、と何度も思った。
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