忘れ人
「なら彼女の“弱さ”はこれが原因なのでしょうか。」
雪也が瞳をそっとふせて、これ、と言いながら自らの頭をトントンと叩いた。
その仕草の意味は、この場にある者だけが分かるもの。
「そう、かもしれないね。」
苦々しげな顔で、理事長が頷く。
俺は・・・
ここに来る途中、偶然視界に入った秋峰の姿を思い返していた。
表情は分からなかったけど、確かに纏う雰囲気が他と異なっていた。
あの違和感は・・・“これ”が原因か。