忘れ人

「一言お願いします。」

そう言ってマイクを押し付けてくる菊池にちょっとイラつく。

一言って何?

え、ほんとに何も考えてないんだけど。

そういうのは事前に言ってよね!


「あー、と。秋峰朱莉です。精一杯つとめさせていただくので、よろしくお願いします。」

とりあえず無難な言葉をチョイス。

まあ、よろしくって言ってもよろしくしてくれる人なんていないと思うんだけどね。

あ、そういえば声、高校に入って初めて人前でだしたな。

何人かがアイツ喋れたのか、って目で見てきてる。


「それでは朝会を終わります。」

菊池の憎たらしい声を聞き流しながら、確信した。

この、隠す気もないほどあからさまな刺々しい視線に、向けられた敵意。





人生終了の予感がする!








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