私のご主人様~ifストーリー~
翌日に式を控えた晩。
手酌で月見酒をしていた季龍さんを見かけ、おかわり片手に隣へ行く。
「若頭が手酌じゃ、寂しくありませんか?」
気の利く妻を装ってみたりして。
季龍さんは満更でもない様子で隣に誘ってくれた。
縁側は少し冷えるけど、窓から眺めるよりずっと雰囲気もあった。
「琴葉」
「あ、すみません」
お酌しにきたのに、しっかり見てなかった。
改めてお酒を注ぎ、月を見上げた。
「琴葉」
「え?」
やけに飲むペースが早いなと思ったけど、違ったみたいだ。
季龍さんが真剣な目をしていることに気付いて、手を止めて向き合う。
「式に出れば、お前は二度と表の世界に戻れなくなる。本当にいいのか?」
なんだ、そんなことか。
季龍さんの問いに微笑んで頷く。