私のご主人様~ifストーリー~
親子
焔side
「ここ、か…」
今時珍しい、平屋建てに、立派な門構え。
正直、ここまでの規模の組に関わる事件に立ち会ったこともないし、実際目にするのも初めてだった。
…お袋が突如失踪してから、丸10年。
誰にも、何も言わずに消えた。
俺が気付いたのは、帰省した日で、向かいに住む仲の良かった幼馴染一家にお袋が旅行に出たきり戻っていないことを知らされた。
家の中は、自然に片付けられていた。
旅行に出るというのだから、冷蔵庫の中身も最小限であることや、掃除が行き届いていること、生ゴミがないことも自然と納得がいった。
ただ、不自然にもお袋はまるで自分がいなくなった後のことを考えた片付け方をしていた。
例えば、通帳や銀行印が同じ場所にあること。家の契約書、保険の証書などの重要書類が一目見ただけでまとめられていたこと。
それは、その人の性格上当たり前のことかもしれない。
でも、明らかにそれらは俺が困らないようにとお袋のせめてもの気配りだと感じられずにはいられなかった。