私のご主人様~ifストーリー~
「一時の感情で選ぶような道じゃないよ。一緒に行くというなら、全てを捨てる覚悟を持たなきゃいけない」
誰と、なんて言わなくても分かる。
信洋さんは振り返ると、口角を上げる。その目は、笑ってすらいないのに。
「それに、“あんな男”に惚れるここちゃんは見る目ないよね」
信洋さんはひらひらと手を振りながら屋敷の中に戻っていく。
ポツンと玄関に取り残されたまま、渡されたメモをぼんやり見つめる。
ここに書き示すのは覚悟なんだ。
その重みが伝わってくるような気がして、手を力を込めた。
「琴音、何してんだ」
「お姫様、ほら目冷やそ?」
顔を上げると、暁くんと奏太さんがいた。その手には氷袋とブランケットがある。
わざわざ用意してくれたんだ。