私のご主人様~ifストーリー~

みんな、優しすぎる。

ヤクザという言葉からのイメージを打ち砕いてしまうほど、冷酷で、非道なイメージとは全く違う人たち。

…でも、そのイメージは、そうやって“抱かされている”ものなのかもしれない。

私は何も知らない。

彼らの本当の顔を、彼らが歩む本当の世界を。

…ならば、“今の私”は籠の中の鳥のまま。愛でられて、優しさだけを向けられる、愛玩動物に過ぎない。

そんな“もの”はきっと、彼らの世界では大きな荷物になってしまう。

そうならないために、必要なこと…。

メモとペンを片手に廊下に出る。誰もいない。あと、とても静かだ。

…あの時を思い出す。

信洋さんと交渉して、舛田を出し抜こうとしたあの日。思えば、あれが初めて裏社会の一面に触れた時だったかもしれない。
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