私のご主人様~ifストーリー~

静かな廊下を進み、平沢さんの部屋の前まで来る。

握ったメモとペンを握る。

今まで与えられなかった選択肢。それを選ぶ覚悟も、責任も全部私自身にある。

その重圧に押し潰されてしまいそうだ。

「誰だ?」

襖の前で突っ立っていたせいで、中にいる平沢さんに気配が届いたのか。

かけられた声に少し間を開けて名前を告げると、すぐに襖が開いて平沢さんが出てきてくれた。

部屋の中は随分片付いていて、少し寂しさすら感じてしまう。

「もう決めたのか?」

平沢さんの視線は私が握っているメモに向けられてる。思わず首を横に振って、顔をあげると怪訝な顔を向けられた。

「…少し、少しだけでいいので、話をしてくれませんか?」

「…入れ」

茶化す様子はなくて、平沢さんは部屋に招き入れてくれる。

座って対峙したとき、平沢さんは組長としての顔をしていた。

思わずその威圧感に息を飲む。これが、見せられることがなかった裏の世界で生きる人の顔。
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