私のご主人様~ifストーリー~
しばらくして、やっと顔を上げたお袋は俺に視線を向けると困ったように笑って見せた。
そんな反応に余計に苛立つのを自覚しながらも、お袋の次の言葉を待った。
「焔、やっぱり“似てるねぇ”」
誰に、なんて言われなくても分かる。
“親父”に似てる。ヤクザの、親父に。
反吐が出る。
大嫌いだ。この世の中の正義を乱す奴ら。その筆頭。
そんな奴らの血が、俺の中に流れてる。
その事実がただただ苦しくて、嫌だってのに。
お袋は自分の隣をポンポンって叩く。でも、隣に行く気にはなれなくて、その場で立ったままお袋を睨み付けた。
「ずっと、笑ってたのかよ。…警察になりたいって、ずっと言ってきた俺を!!
無理だって分かってた癖に!
何で止めなかったんだよ!何で応援なんかすんだよ!!
ふざけんな!俺が、今までどんだけ頑張って来たと思ってんだよ…」
高校の卒業も近く、大学受験が始まって、夢が現実味を帯びてきそうっていう、こんなタイミングまで、なんでなにも言ってくれなかったんだよ…。