私のご主人様~ifストーリー~
悔しいのか、憎たらしいのか。
分かんなくなって溢れだした涙を乱暴に拭う。不意に俺の頬を包んだ手を即座に振り払う。
お袋はやっぱり困った顔で俺を見ていた。
「ねぇ、焔。私は、ずっと焰の夢を応援してるよ。…今も、昔も、ずっと変わってないよ」
「は?親父がヤクザなのに、なれるわけ…」
「なれるよ。焔は警察に。焔が望めば。何にだってなれる。…好きな職業に就いて、自由に生きられるよ」
断言するお袋の言葉は意味がわからなかった。
だって、“ヤクザ”の子どもである俺たちが自由な職業に就けるわけがない。
自由に生きられるわけがないのに。
…そう考えて、ふとおかしいことに気がつく。
“自由”に生きてきた。今まで、ずっと。
父親こそいなかったものの、“普通”に学校に行って、“普通”に生活してた。
もちろん、“ヤクザの世界”を垣間見ることすらなく、生活してきた。