私のご主人様~ifストーリー~
「…お嬢」
襖の向こうからした声に、我にかえる。
日はどっぷり暮れていて。いつまで呆然としていたのかと愕然とした。
再び聞こえてきた呼び掛けにハッとして、返事をするとゆっくりと開かれた襖。
月明かりで僅かに届く光で照らされた廊下に立っていたのは季龍さんだった。
「季龍、さん」
「…子どもが、出来たと聞いて」
かなり動揺してる。
それがはっきり分かるほど、季龍さんは狼狽えていた。
思わずお腹に手をやり、ゆっくりと頷く。
刹那、その場に膝をつき頭を下げた季龍さんにゾッとする。
「…おろして、ください」
消え入りそうな声だった。
でも、確実に。季龍さんも、この子を望んではいないことがはっきりする。