私のご主人様~ifストーリー~
言いたいことも、思いもちゃんとまとまってない。
でも、“この子”を諦めたくない。それだけは絶対に確かな思いだ。
奏多さんは黙ったまま。否定してくることも、止めることもない。
…もしかしたら。
1歩、前に踏み出す。1歩、1歩奏多さんへ、玄関へ近づいていく。
それでも、奏多さんは何もしてこなかった。
当たり前のように置かれている外履きに足を入れても、奏多さんの隣を過ぎても、止めることもない。
「…ごめんなさい」
自然と口からこぼれた言葉。
玄関に手をかけ、扉を開けた時、そこで待っていた森末さんと心結くんに目を疑う。
2人は、私が出てきたことに大きく驚いた様子もなく、ただ少しだけ寂しそうな顔をしていた。