私のご主人様~ifストーリー~
そう、まるでこうなることを見越していたかのように、信洋さんからはパソコンにまつわる技術を学んでいた。
その技術は、在宅で、即戦力で、戦える力だ。
奏多さんは笑うと、私の背を押す。
…季龍さんにはなにも告げなかった。
ううん、それでいいんだ。この子を産みたいと、一緒に過ごしたいと望んだのは私なんだから。
離れることが辛くない訳じゃない。
会えなくなることが寂しくない訳じゃない。
でも、それでもこの子を諦めるのは、嫌だって決めたのは私なんだ。
森末さんが運転する車で、屋敷を離れる。
静かに離れていく。文字通り夜逃げだ。
森末さんは、もっとも近い大型の駅のロータリーまで運んでくれた。新幹線もあるその駅で、森末さんたちとも別れる。
「お元気で」
「頑張ってね」
「ありがとうございます」
再びいつ会えるのかなんて分からないのに、あいさつはとても軽いものだった。
でも、その気軽さが、自分が犯したことの責任を考えなくさせてくれる。
最後の最後まで甘えっぱなしだった…。