私のご主人様~ifストーリー~

「なぁ、お袋は親父に会いたいって思わねぇの?」

「…会いたいよ。すごく、会いたい」

一瞬迷ったけど、本心を口にする。

ここで嘘をつくのは違うと思ったから。

焔の表情が曇る。

「…お袋は……やっぱ何でもない」

まるでその考えを振り払うように、焔は吐き捨てるように言うと立ち上がる。

呼び止める間もなく焔は、リビングを出ていってしまった。

…焔が残していった資料を手に取る。

そこに写った彼の姿に、どうしようもなく惹かれる思いを自覚した。

「…季龍、さん」

久しぶりに、本当に久しぶりに口にした名前。

会いたい。…でも、今はまだ……。
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