私のご主人様~ifストーリー~
普通に、話せているよね。
そんなことを思いながら笑っていると、おばさんはあぁそうだと思い出したように口を開く。
「いつ戻るんだい?新聞、抜いといてあげるから」
何気ない質問だ。深い意味なんかない。
分かってる。…でも、ここに戻るつもりのない私には、私の考えが見透かされているような気がして、冷や汗をかいた。
「特に決めてないんです」
精一杯ついた嘘。
ばれていないだろうか。
心配をよそに、おばさんはいいわねなんて言って笑っていた。
楽しんでらっしゃいと送り出してくれたおばさんに手を振り返して家を後にする。
20年、あっという間だった。
すごく長かった。
相反する気持ちを抱えながら、焔と過ごした街をあとにした。