私のご主人様~ifストーリー~

この惣菜屋さんは、近所の人たちに贔屓にされているみたい。

顔馴染みらしいお客さんたちが、入れ替わり立ち替わりでやって来る。

店の人は、店主さんと心結くんだけ。忙しそうに動き回る姿に、自然と足が動いた。

「手伝います」

「…接客と、レジ頼む」

「はい」

店主さんの指示を聞いて、さっきまで見ていたことを真似する。

接客は思いの外楽しくて、あっという間に時間は過ぎた。

「ありがとうございました」

気づいたときには夕方になっていて、オレンジ色の空を見上げた。

「ん」

差し出されたビニール袋には、お総菜が入っていた。店主さんはぶっきらぼうのままだけど、気遣ってくれているのがわかる。

「ありがとうございます」

「…」

「琴音さんっ!ごめんなさい!!」

飛んでくるように来た心結くんは、すっかり帰り支度を整えていた。

もうお仕事はおしまいなのかな?
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