求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「まさか……遥人さん、誰か好きな人が出来たの? その人と結婚するの?」

「そうじゃない。ただ日奈子と結婚は出来ないんだ。今後個人的に付き合うのも無理だ」

遥人は立ち上がり、深く頭を下げた。

「本当に申し訳なかった。忘れたことも、俺の態度がはっきりしないせいで今日まで来てしまったことも……出来る限りの償いはするし、北桜家にはきちんと謝罪に行く」

聞き流されることがないように、はっきりと告げる。

(日奈子とは付き合えない)

こうして謝罪している間も、心の中では他の人への想いが生まれ初めている。

好きになるように努力しても、心が勝手に惹かれる衝動には抗えないと気づいてしまったから。


しばらく待ったが反応がなく、遥人はゆっくりと体を起こした。

日奈子の姿を目に止めた瞬間、動揺が走る。彼女の大きな瞳から涙が流れ落ちていたからだ。

声もなく泣く日奈子の姿に、強い罪悪感がこみ上げる。

それでも前言撤回は出来ない。

遥人が何も言わないと察したのか、日奈子の顔が歪んだ。

「私、認めないから。私と別れて他の人と付き合うなんて許せないもの」

「誰かと付き合いたから言ってる訳じゃない」

「でも遥人さんはいつか幸せになるんでしょう? 私はもう幸せになれないのに不公平じゃない」

「そんなことはない、日奈子は幸せに……」

なれるはずと言いかけた遥人の言葉は、驚く程の大声で遮られた。

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