求婚蜜夜～エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい～

「嘘つき！」

それまで見たこともないような日奈子の激しさに唖然としてしまう。

「日奈子……」

言葉なく日奈子と見つめ合っていると、応接室のドアがコンコンと叩かれた。

「遥人さま、日奈子さま、どうされましたか？」

宝田だった。不穏な気配を察して様子を見に来たのだろう。

日奈子は白く繊細な指先で涙を拭うとドアに向かい、大きく開いた。
同時にそれまで泣いていたのが嘘のように、口角を上げて作り笑いをする。

「何でもないわ。でも疲れてしまったので私はそろそろ休みます」

「はい。ではお部屋までご案内いたします」

宝田はこの状況を不審に感じているはだが、遥人を一瞥してから日奈子を連れて去って行った。

一人きりになると、遥人はソファーに座り込み頭を抱えた。