求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「今から、休憩?」
近付いて来た遥人が爽やかな笑顔で話しかけてきた。手には鞄と図面ケース。それから大き目の紙袋がある。
「残業になりそうだから、飲み物とおやつを買って来ようかと思って」
「今日も残業? 最近残ってばかりだけど大丈夫?」
遥人は少しだけ眉をひそめて言う。心配そうなその様子に結衣は戸惑いを覚えながら頷いた。
「大丈夫だよ……才賀君も現場から直帰しなかったということは残業?」
「ああ。今日中に纏めたい資料があって」
遥人は結衣を促すような動きで歩き始める。その足はコーヒーショップに向かっており、彼も一緒に行くつもりでいるのが分かった。
最近、こんな風に彼の方から声をかけて来る機会が増えている。
多分、復帰した仕事に慣れて、結衣との距離感にも馴染んで来たからだ。遥人の方は緊張感がなくなり、その分屈託なく結衣に振舞えるようになったのだろう。
ただ結衣にとっては複雑だった
これではいつまでたっても気持ちが落ち着かない。諦める為に距離を置くるべきなのに、むしろ近づいている状況なのだから。