求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

日に日に屈託ない様子になっていく遥人とは対照的に、結衣はどんどん自然に振舞えなくなっていた。

いつまでもうじうじ悩んでいても仕方ないと分かっているけど、なかなか割り切れない。

「水島さんはいつもココアにしてるの?」

「うん。忙しいときって甘いものが飲みたい気分になるから」

話しかけられると普通に返せる。だから最近の会話はたいてい遥人が質問し結衣が答える形になっている。

(本当は聞きたいことが沢山あるんだけどね)

長期の休みをとっていたとは思えないほど、ハードな業務をこなす彼が心配で、大丈夫なのか聞いてみたい。

依然として遥人に頼ってばかりの梓との関係が負担じゃないのか、知りたい。

ただそれは結衣が勝手に心配しているだけなので、口にはしない。

甘いココアを味わっていると、遥人が思い出したようにいう。

「水島さんは忘年会参加する予定?」

「うん、そのつもり。才賀君は?」

「俺も参加。仕事も調整済み」

「会社の忘年会は面倒って言う人もいるけど、うちの部は参加率高いよね」

酒好きが多いせいだろうか。

飲みの席では常からある立場の違いを忘れ盛り上がるので、なかなか楽しめる。しかし遥人は意外な発言をした。

「ただ今年は少し不安もあるな」

「どうして?」

「実は幹事が動けていない」
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