求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
意味が分からず結衣は首を傾げた。

幹事は社歴が浅い社員が順番に行うのだけれど、動いていないのはどういう意味だろう。

今回は確か菅原という結衣より一つ下の男性社員と、梓だったはず。

(あ、もしかして……)

ぴんと来るものがあり結衣は顔を曇らせた。仕事で追われている梓が対応出来ていないのかもしれないと思い立ったのだ。

「忘年会どころじゃないってこと?」

予想通り遥人が頷く。

「そう。さすがにギリギリになったら動くだろうけど、トラブルになりそうだよな」

「うん……そうだよね」

梓に一番近い遥人に負担がかからないか心配だ。出来ないなら早めに他の人に変わって貰うよう頼めばいいのに。

結衣に相談してくれたら代わりに対応するつもりでいる。

(でも……私が口出すことじゃないよね)

遥人と梓の問題に入っていく立場でも関係でもないのだから。

結衣が何も言わなくなったからか、沈黙が訪れる。そろそろ戻ろうかと考えたとき、遥人が口を開いた。

「あのさ、もし覚えていたら教えて欲しいんだけど」

発言内容と躊躇いがちな口調から、遥人が忘れていた時期についての話をするのだと察した。
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