求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
(あ……才賀君とふたりで食事に来たんだ)
考えてみれば、遥人がわざわざ結衣たちを探しに来るわけがない。用が有ったとしても会社で言えばいいだけだ。
(私、自意識過剰すぎる)
さり気なく遥人に目を遣れば、彼は結衣の方など見ておらず、菅原に視線を向けていた。
「俺たちは現場の帰り。打合せしながら食事をしようと思ったんだけど、菅原たちがいるとは思わなかったな」
(あれ?)
遥人の声がいつになく冷たく感じた。現場で問題が発生したのだろうか。
(それとも瀬口さんと何かあった?)
梓は遥人が留まってるのを見て渋々といった様子でこちらに近付いて来る。その様子から結衣たちと関わりたくないのが見て取れた。
「才賀さん、菅原との話はあとでにしてくださいよ」
遥人が目を細める。この仕草は彼が苛立っているときに見かけるもの。
(才賀君、やっぱり機嫌が悪い)
空気までが重くなったような気がして、結衣は落ち着かない気持ちになる。
けれど菅原も梓もそれに気づかない。