求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

梓と菅原が揉めているのが気になったのだろうけど、会社に戻ってから事情を聞けばいいのに。

オムライスをスプーンで掬ったものの、この状況で平気で食べられる程結衣の神経は太くない。

なるべく音を立てないように、目立たないようにと緊張しながら食べる為、せっかくの食事を味わえなかった。

しばらくすると遥人が口を開いた。

「それで何を揉めてるんだ?」

何か言おうとした梓を制して菅原が早口で答える。

「瀬口が忘年会の幹事の仕事を全くこなしてなかったんです。そのまま水島さんに押し付けたものだから、今困った状況になっていて」

「え……」

遥人が目を瞠り、結衣に視線を向ける。同時に梓が反論した。

「押し付けたんじゃなくて、お願いしたんです。それに仕事をこなして無かったって言うけど、だったら菅原が動けば良かったんじゃないの?」

再び険悪な気配が訪れる。

(このふたり、同期だけど合わないのかな)

今回の件に限らず、もともと不仲だったのかもしれない。

「つまり、今は菅原と水島さんで幹事を? 困ってるって言うのは?」

遥人は今度は結衣に質問して来た。

「先週末に引き継いだんだけど、場所が決まらなくて困ってるの」

「場所ってまさか手配してなかったのか?」

遥人は驚愕した様子で、菅原と梓を見遣る。

梓は憮然とし、菅原は「はい」と返事をした。
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