求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
遥人は呆れたような溜息を吐きながら、ぼそりと呟く。
「それで先週から菅原と話してたのか」
「え?」
「いや、なんでもない。それより今更場所を押さえられなかったなんて部長には言えない。かと言ってこの辺りの店のキャンセル待ちを狙うのは確実じゃない。俺が都合を付けられる店があるから、そこでやろう」
「……本当に?」
思いがけない救いの言葉に、結衣は唖然とした。直ぐに安心感がこみ上げる。
縋るように遥人を見つめてしまったのか、彼が困ったような苦笑をした。
「ただ会社から距離があるんだ。上から何か言われるかもしれない」
「それは仕方ないよ。中止より全然いい。そうだよね、菅原君」
ほっとしたせいか、気分が高揚し声が高くなってしまった。
菅原も安心したのかかなりの笑顔だ。
「はい。さすが才賀さん! 助かりました あーほっとしたら食欲湧いて来た」
「お前、食べたばっかりじゃないのか?」
遥人の呆れた声を気にすることなく、菅原は追加の注文をする。
「……すごい食欲」
思わず結衣が呟くと、菅原が笑う。
「食欲って精神的なものが大きいんですよね。水島さんも食べないと。最近痩せましたよね?」
「そんなことないけど」
その通りなので、内心驚きながら答える。そのとき大きなため息が聞こえた。