求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「今日、例の店に行って話して来ようと思ってるんだ。出来れば水島さんにも一緒に行って欲しいんだけど」
例の店とは、忘年会の会場になる遥人の知人の店のことだ。
「もちろん行くよ。早く帰れるように調整しておく」
残業してやりたい仕事はあったけれど、そもそも担当ではない遥人に任せきりには出来ない。
結衣が同行するのは当然だ。
頭の中でこれからの段取りを考える。
(ええと、四時から会議があって終わるのが五時過ぎ。申請書の締切時間に間に合わないからそれは明日に回して……)
「時間と場所はあとで連絡するから」
「うん」
遥人は満足そう微笑むと梓たちの所に向かう。きっと仲裁に入るのだろう。
何やら話している三人の少し後ろを歩きながら、結衣ははっと気がついた。
(私、才賀君と出かけるんだ)
ちゃんとした用件があるとはいえ、遥人とふたりきりになるのは、あの自ら失恋した夜以来初めてだ。
(大丈夫かな……)
胸が騒めく。それは期待と不安と怖さといろいろな気持ちが入り混じった複雑な心境だった。