求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
雰囲気とアルコールに結衣はすっかり酔っていた。
すぐ側の遥人の気配にときめきを感じながらも、段々と慣れていき緊張は解れてくる。
その分会話が弾んでいた。
「すごく綺麗な景色だね。うちの会社のビルも見えるかな、向こうの方だよね」
連城設計の入っているオフィスビルは、高層でシルエットに特徴があるから遠くからでも目立つ。
はしゃぐ結衣に、遥人も楽しそうに答えてくれる。
「明るかったら分かりそうだな。ここは昼も営業しているから、今度来てみる?」
「いいの?」
日中はまた違った景色が楽しめそうだ。解放的な青空と富士山も見えるかもしれない。
(嬉しい……幸せだな)
美しい光景をたのしめること、そして遥人とまたこうして出かけられる未来があるのが。
「なんだか、信じられない」
呟くと遥人が不思議そうに「なにが?」と聞いて来る。
「こうして才賀君と一緒にいられるのが。今朝起きた時には忘年会の件で憂鬱になっていて、こんなふうになるなんて想像もしてなかったから」
「現実だよ。俺は今最高に幸せ感じてる」
大切だと訴えてくるような優しい眼差しに、心が疼いた。
「わ、私も、最高な気持ち」
「でも俺も朝は憂鬱だったんだよな。今日だけじゃなく先週からずっと」
「先週? ……そう言えば昼も少し機嫌が良くなかったよね。仕事で何か有ったの?」
ふいに梓の姿が浮かんできて、幸せだった気持ちに染みが出来たような気分になる。