求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

「楽しそうだな。何を考えてるの?」

遥人がくすっと笑いながら聞いて来る。

「何でもないよ」

誤魔化したけれど、鋭い彼なら結衣が浮かれているのなんて見透かしていそうだ。

その証拠のように遥人は追及して来ない。満足そうにお酒を飲みながら、ときどき結衣に視線を向けて来る。

その眼差しがあまりに色っぽくて、結衣の心は落ち着く暇がない、

(才賀君はかっこよすぎるから困る)

半ば逆上せた頭を冷やす為、グラスを手にして一気に飲み干す。

グラスが空になったのと同時に、遥人の声がかかる。

「次は何にする?」

「……同じものを」

明日は仕事だと言うのに、飲み過ぎかもしれない。

でも、もっと深く彼と話し合いたいのに臆病な結衣には、今はまだお酒の力が必要だ。

「才賀君。さっき私が菅原君と話していたのを見て嫉妬したって言ってたでしょ?」

「ああ、嫉妬した」

菅原の名前が出ると、遥人の目から穏やかさが消える。

(独占欲が強いって言ってたけど、本当なんだ……)

「誤解させてごめんね。でも私も嫉妬してたんだよ」

「え?」

思ってもいない発言だったのか、遥人が戸惑いを見せる。

「……才賀君の側にはずっと瀬口さんが居るでしょ? 仕事だと分かっていても、いつも一緒にいられる彼女が羨ましかった。才賀君も彼女を気に入ってるんじゃないかと思っていたから」

「いや……まさか。それはない! 現場や打ち合わせに同行していたのは事実だけど、プライベートでは何もないから」

遥人は珍しく慌てた様子で否定する。その様子で、梓との関係は本当にただの同僚なのだと分かった。
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