求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

遥人が失った記憶は半年前後。その間に付き合ったのなら、それ程長い関係じゃない。

お互いまだ新鮮で、盛り上がっているであろう時期。

(でも、才賀君にはそんな様子は無かった。浮かれてなんていなかったし、毎日遅くまで仕事をしていたし……)

上手く隠していただけなのだろうか。彼は仕事とプライベートをしっかり分けることが出来そうだし。

忙しい中でも時間をやりくりして、恋人とデートをしていたのかもしれない。

(でもそれなら……どうして私に好きだなんて言ったのかな)

「ごめん。嘘で誤魔化したくなかったから話したけど、不快だよな」

「……私、何て言っていか……混乱していて」

正直言えば聞きたくなかった。
でもこんな話になったのは、結衣が事故の日の話をしたからだ。
彼が人と会ったのを気にしているのを、話したから。

彼は正直に答えてくれている。それは良かったと思う。嘘をつかれて後で真実を知ったらもっと傷ついただろうから。

(やっぱり才賀君は、いい加減な人じゃない)

そんな彼が、あのとき告げてくれた言葉が嘘だったなんて思えない。本心だったと信じたい。

だけど、誠実さを見せる一方で二股のような真似をしている。何もかも分からなくなってしまいそうだ。
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