求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「以前の俺は、付き合ってる相手がいながら結衣に告白したんだ。自分でもどうしてそんなことをしたのか分からない。心変わりをして結衣を好きになったなら、まずは彼女と別れるべきだった。それなのに……酷いことをした」
「私も才賀君がそんなことをしたなんて信じられない」
今の遥人の考え方は、結衣が思っている通りの彼だ。どうしてという言葉しか出て来ない。
「ごめん。過去の俺は最低だった。でも今結衣を好きだと思う気持ちは真剣なんだ」
彼の目に嘘は見えない。結衣を大切に想ってくれている気持ちが伝わってくるようだ。
(やっぱり今の才賀君が本当の姿。あの頃だけがおかしかったんだ……)
知ってしまった事実に、まだズキズキと胸が痛むけれど、この瞬間の遥人を信じたい。
だって好きなのだ。酷いことをしたと知っても、どうしても嫌いになれない。
結衣の心の中には、消えない不信と不快感がある。どうして?と問い詰めたくなるような衝動も。
でもそれ以上に離れたくない。遥人を二度と手放したくない。
「私も才賀君が好き。こんな話を聞いてショックなのに」
「結衣……ありがとう」
遥人はほっと目元を和らげる。それでもまだお互いに溝があり、彼が結衣に触れて来ることはなかった。
多分、まだそんな気になれない結衣の気持ちを察してくれているのだろう。