求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
いつもより頼りなく見える後ろ姿に、遥人の胸も穏やかじゃなくなる。
(間違ったとは思わないけど、後味は悪いな)
遥人もゆっくりと同期会を行う居酒屋に向かう。結衣はもう着いただろうか。
(そう言えば、予定外の発言をしたよな)
結衣への気持ちを梓にはっきりと伝えた。もうしばらく社内では隠しておきたかったというのに。
昨夜の電話の感じでは、結衣は公表したそうだった。
それは当然の感情だろう。遥人は一度結衣への気持ちを忘れた前科があるのだから。
正直言えば遥人も堂々と皆に告げたい。結衣と付き合っているのだと。
他の男への牽制になるし、彼女を独占している満足感がある。
ただ実際はなかなか難しい。
会社で噂になる分には大した問題ではないが、遥人が認めたら確実に家族の耳に入るだろうから。
両親も兄も、遥人が日奈子と別れたことを良く思っていない。
北桜家との関係が悪くなるのを懸念しているというより、日奈子に同情している。
傍から見たら何も悪くない彼女が覚えていないからといって捨てられた形になっているからで、顔を合わす度に考え直した方がいいと言って来る。
それにはっきりと別れを告げたはずの日奈子が、未だに一方的な連絡をしてくる。
応じてはいないが、もう少し落ち着くまでは結衣とのことは言い出せない。
遥人がどんな言い方をしても、結衣が横から割り込んだと思われる可能性が高いから。
何も悪くない彼女が、酷い人間のように思われるのだけは避けたい。