求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

あの頃の遥人は結衣に対して心を開いてなかったのだし。

(何も覚えていないのだから仕方がないけど……)

「才賀君……あれから記憶に変化は?」

「変わらずだよ」

「そう……」

「ごめん。結衣とのことを、なかなか思い出せなくて」

「才賀君のせいじゃないんだから、気にもしないで。たしかに思い出してくれたら嬉しいけど、無理しては欲しくないから」

今再び思いが通じ合い関係は元通りになったけれど、ふたりで過ごした思い出が共有できないのは寂しい。

それに記憶が戻れば、あの事故の日に彼が本当は何を考えていたのかを知ることが出来る。


(付き合っていたという彼女との関係。そしてあの事故の日に何をしようとしていたのか)

好きだから嫉妬するし、知りたいと思う。今日のことだって。

「ねえ才賀君。あの後、瀬口さんとはどうなったの?」

「少し言い合いなった。でも最終的には分かって貰えたんじゃないかな」

「言い合いってどんな?」

「結衣が言ってたことを、再度強く伝えた感じかな。俺が瀬口さんの態度に不満を持ってることもはっきり伝えた」

遥人の言葉に、結衣はかなり驚いた。

「才賀君は瀬口さんの何が不満だったの? 私、彼女のことは熱心な後輩だと思ってるのかと……」

「結衣が言っていた通りのことだよ。相手の都合を考えないところ。自分の都合を当然のように押し付けるところ」

結衣の驚愕に気付いたのか、遥人が気まずそうにする。


「彼女を嫌ってる訳じゃないんだ。仕事で認めている部分もあるし、感謝もしている」

「あ、うん。それは分かってる。才賀君以前に彼女は成績にならないような仕事を任されていて大変なのに頑張ってるって言ってたから。だから私才賀君は瀬口さんを気に入ってると思ってたんだし」

< 200 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop