求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

「ショックって、仕事ですか? 俺、手伝いますよ?」

「ありがとう。でも本当に大丈夫だから。そろそろ戻ろう」

まだ気にしている様子の菅原に、席に戻るように促す。

結衣は直ぐには戻らず、パウダールームで菅原が気付く程の顔色を確認した。

(本当に酷い顔)

それに不安に怯えたような表情になっている。堂々として美しかった日奈子とは正反対だ。

「はあ……」

気付けば溜息が漏れている。

日奈子が来たことを遥人に話した方がいいのだろうか。

ショックだったと気持ちを伝えれば、フォローしてくれると思う。

だけど、日奈子が何を言っていたのか詳細に聞かれるのは間違いない。

彼女が遥人を未だ諦めておらず、気持ちを残していることを遥人は改めて知ることになる。

日奈子について、考える理由を与える結果になる。

(それは嫌だ)

深く考えてもし遥人が日奈子への気持ちを思い出してしまったら、今の幸せが崩れ去る。

(どうすればいいんだろう)

身を退くなんて出来ない。散々傷ついて諦めようとして、それも出来なくて苦しんだ末ようやく思いが通じたのだから。

今また彼を失ってひとりになったら、今度こそ立ち直れないと思う。

(日奈子さんの気持ちも分るけど)

申し訳ないと心から思ってる。それでも……。
< 214 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop