求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「ショックって、仕事ですか? 俺、手伝いますよ?」
「ありがとう。でも本当に大丈夫だから。そろそろ戻ろう」
まだ気にしている様子の菅原に、席に戻るように促す。
結衣は直ぐには戻らず、パウダールームで菅原が気付く程の顔色を確認した。
(本当に酷い顔)
それに不安に怯えたような表情になっている。堂々として美しかった日奈子とは正反対だ。
「はあ……」
気付けば溜息が漏れている。
日奈子が来たことを遥人に話した方がいいのだろうか。
ショックだったと気持ちを伝えれば、フォローしてくれると思う。
だけど、日奈子が何を言っていたのか詳細に聞かれるのは間違いない。
彼女が遥人を未だ諦めておらず、気持ちを残していることを遥人は改めて知ることになる。
日奈子について、考える理由を与える結果になる。
(それは嫌だ)
深く考えてもし遥人が日奈子への気持ちを思い出してしまったら、今の幸せが崩れ去る。
(どうすればいいんだろう)
身を退くなんて出来ない。散々傷ついて諦めようとして、それも出来なくて苦しんだ末ようやく思いが通じたのだから。
今また彼を失ってひとりになったら、今度こそ立ち直れないと思う。
(日奈子さんの気持ちも分るけど)
申し訳ないと心から思ってる。それでも……。