求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
席に戻り仕事の続きをする。
集中出来ずに効率は最悪のまま、ろくな成果は出せずに就業時間近くになる。
その頃になると外出していた社員たちがぞろぞろと帰って来た。
その中には遥人の姿もあった。
黒いコートを羽織り、姿勢正しく歩く彼は一際目立つ。遠くからでも特別に感じる彼を見ていると辛くなる。
(また才賀君が遠くなるなんて……)
考えると、鳩尾のあたりがぎゅうっと締め付けられるように痛む。
「痛……」
思わず呻くと、まどかに聞こえたようで心配そうな目を向けられた。
「胃が痛いの? 顔色も良くないね」
「うん、少し」
「薬飲む?」
「ありがとう。でも大丈夫」
これはきっと精神的なものだ。
「そう……今日飲み会だけど結衣はお酒は控えた方がいいね」
「そうする」
飲んで嫌なことを忘れたい衝動はあるが、今の結衣がそれをやったら取返しがつかない失態をしそうだ。
忘年会が終わるまでなんとか耐えなくては。二次会は菅原に任せて休ませてもらおうか。
痛む胃をさすりながら仕事の続きをしようと、画面を開く。そのとき遥人がこちらを見ているのに気がついた。