求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

(才賀君?)

彼は怒ったような険しい目で結衣を見ている。

(どうしたの?……まさか北桜さんのことを知っている?)

今更のように気がついた。結衣が黙っていようが日奈子が話せば遥人の知るところになるのだということに。

何か言いたそうな遥人の視線が怖い。ずきんと胃が鋭く痛んだ。



就業時間が過ぎると皆それぞれ移動をはじめる。

幹事の結衣は役職者のタクシー手配の仕事があるので、後から出発する。

店の方には菅原と遥人に向って貰った。

遥人は結衣と一緒に残りたがっていたけれど、店側としては遥人が居た方がやりやすいはずだ。

かと言って菅原とタクシー手配の仕事を交代するには不安がある。

菅原は細かいことに気を回すのが苦手なので、役職者からクレームが出る恐れがあるのだ。

そんな訳で結衣ひとりが後から向かうこととなった。


タクシーを見送り急ぎ駅に向かう。
慌ただしけれど、今はその方がいい。





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