求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「結衣」
「どうしてここに? 二次会に行ったんじゃなかったの?」
「結衣を待っていたに決まってるだろ」
遥人は結衣の手を引き、改札を通過する。
「私を待ってたって……それにどこに行くの?」
「家まで送る。会社に居る時から具合が悪かっただろ? 早く帰って休んだ方がいい」
「……気付いてたんだ」
まどかの言う通りだった。
「顔色が悪いし本当は飲み会なんて休んで欲しかった。でも幹事を引き受けている結衣が休むとは思えなかったから」
遥人は結衣の性格をよく分かってる。
丁度やって来た電車に乗り込む。混んでいて座れなかったけれど、つり革をキープ出来た。
「どこか痛むのか?」
「ただの胃痛。昔から嫌なことがあるとなるんだ」
「嫌なこと?」
遥人が眉をひそめる。
(私また余計なことを)
どうして遥人の前だと、うっかりした発言をしてしまうのだろう。
それで必ず隠し事がばれるというのに。
だけど、そもそも遥人に隠し事をするというのが正しくないのだ。
(一番好きな人に隠し事だらけなんて、そんな関係は悲しいだけだよね)
まだ覚悟は出来ていない。
だけど、日奈子に聞いた話を、彼に言うべきだと思いはじめている。