求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
今、遥人は結衣の隣にいる。
嬉しくて幸せで……少し切ない。
彼を好きな気持ちは間違いないけれど、繋ぎとめる為に抱かれようとしている自分が悲しい。本当はもっと晴れやかな気持ちで、純粋に愛情を確かめ合いたかった。
(そんな理想を求めても仕方ないよね)
彼が好きなら余計なことを考えないで、抱き合えばいい。
(でも……私、卑怯だ)
日奈子のことを、わざと隠しているから。
話そうと考えていたくせに、今すぐ言い出そうとしていない。
遥人と結ばれた後で。もっと強い関係になってから伝えようとしている。それは打算でしかない。
(そんな事をして……本当に幸せだって感じられるのかな?)
初めて彼と過ごすのに。
今だって、幸福感に浸る一方で憂鬱さも抱え、頭の中には日奈子の顔がちらちらと浮かぶのに。
(本当にいいの?)
悩み過ぎて自分がどうしたいのか分からなくなりそうだ。
遥人に別れを告げられたくない。このまま幸せになりたい。だけど……。
「才賀君!」
突然立ち止まった結衣に、遥人が驚きの表情になる。
「どうした?」
「うちに来る前に、話を聞いて欲しいの」
やっぱり駄目だと思った。隠しておけない。
「話?」
「今日、北桜日奈子さんが私に会いに来た」
早口で伝えると、遥人は大きく目を見開いた。