求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

今、遥人は結衣の隣にいる。

嬉しくて幸せで……少し切ない。

彼を好きな気持ちは間違いないけれど、繋ぎとめる為に抱かれようとしている自分が悲しい。本当はもっと晴れやかな気持ちで、純粋に愛情を確かめ合いたかった。

(そんな理想を求めても仕方ないよね)

彼が好きなら余計なことを考えないで、抱き合えばいい。

(でも……私、卑怯だ)

日奈子のことを、わざと隠しているから。

話そうと考えていたくせに、今すぐ言い出そうとしていない。

遥人と結ばれた後で。もっと強い関係になってから伝えようとしている。それは打算でしかない。

(そんな事をして……本当に幸せだって感じられるのかな?)

初めて彼と過ごすのに。

今だって、幸福感に浸る一方で憂鬱さも抱え、頭の中には日奈子の顔がちらちらと浮かぶのに。

(本当にいいの?)

悩み過ぎて自分がどうしたいのか分からなくなりそうだ。
遥人に別れを告げられたくない。このまま幸せになりたい。だけど……。


「才賀君!」

突然立ち止まった結衣に、遥人が驚きの表情になる。

「どうした?」

「うちに来る前に、話を聞いて欲しいの」

やっぱり駄目だと思った。隠しておけない。

「話?」

「今日、北桜日奈子さんが私に会いに来た」

早口で伝えると、遥人は大きく目を見開いた。

< 225 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop